精巣摘出の思い出
こんにちは。こんばんは。
片玉と申します。
見事10万人に1人という確率を引き、片方の精巣を摘出するに至ったので
自身の備忘録として、またはこれから同じ境遇になるかもしれない人の何かの役に立てばいいのではないか?
ということで経緯含めもろもろを書き綴ります。
僕は1985年生まれの所帯持ち(子供2人)で、仕事は営業職の係長。
片方のお玉を摘出する前まではどこにでもいるような人です。
◆ 言いたいことを先に書いときます
日記を書き綴る前に、言いたいことをまとめておきます。
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精巣腫瘍(がん)は痛みがなく、気づきにくい
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「左右のサイズが変だ」「固い」など異常を感じたらすぐ病院へ
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他の部位よりも進行が早く、ほっておくとすぐ他の臓器に転移する
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万一転移したら治療に時間がかかるし、生存率も下がるから急いでほしい
- 片方残ってたらいろいろ大丈夫だから安心して切ってもいい
20~30代に多いため、特に一人暮らしの社会人や大学生は危ないかもしれない。
自分がその境遇だったら甘く見て悪化させていたかもしれないので。
自分が割と早めに動けたのは、家族を守らねばという意識と、親から代々「がん家系」と聞かされていたことがいい方向に働いたのかなと。
大体は書いたので、ここからは自分の好きなように書いていこうと思います。
◆ どうやって気づいたのか
2023年の春先でした。
世はまさに大脱毛時代!今年の夏はハーフパンツで乗り越えろ!
…みたいな風潮が世の中を席巻しており、僕もその流れに乗っかろうとしていました。
嫁さんが購入していた家庭用光脱毛器と除毛クリームで素敵な足を目指し脱毛開始。
始めひざ下から始まった脱毛は次第に下半身を駆け上がり、いつの間にかVIO(おまたの毛)まできれいにしたいと思うようになりました。
それを機に、自分のお玉をよく触るようになったのですが
「俺って左よりも右が少し大きいんだなぁ~」
当時はこの程度の認識しかありませんでした。
そして夏は終わり、ハーフパンツたちもタンスの奥にしまわれていった頃…
毛がないという爽快感を知ってしまった僕は、秋以降も継続して処理することを決定。
さらに時は進み10月の中旬を迎え、習慣化したお玉周りの処理をしていた時
「ん?なんか右が妙にでかくなってないか??」
という疑問が。
痛みは一切ないがあまりにも不自然。サイズや感触も固いゆでたまごのよう。
そのタイミングで病院という単語がチラついてきたのですが
仕事の方では10月末に展示会運営というイベントを控えており、運営メンバーとして準備にアレやコレやと動かないといけないというタイミングでした。
今ではホント考えられないですが、その当時は危機感が薄く
「今仕事に穴空けるのはマズいよなー」
「泌尿器科に行くのってちょっと恥ずいよなー」
「そもそも痛くないしなー」
斜め上あたりを見上げながら、そんなことを考えていました。
そうはいっても気になるので、とりあえずネットで調べてみる。
…精巣腫瘍?10万人に1人?そんな確率引くか?
だが調べれば調べるほど症状が当てはまり倒している。
さらに精巣腫瘍は進行が早く、対応が遅ければほかの臓器へすぐ転移してしまう。
転移した場合どうなるのか、それは数多くの先人たちが情報発信されておりました。
彼らの言葉が刺さる刺さる。
これは病院に行くしかない。信じたくないけど、嫌だけど、行くしかない。
嫁や小学生の子供2人のことが頭に浮かぶ。
ここで抜かってしまえば取り返しのつかないことになるんじゃないか…。
言われてみたらゴリゴリのがん家系でした。
※両親は今も健在
◆ 最寄りの病院へ
10月21日
土曜日の午前中に、泌尿器も診てもらえる最寄りの病院へ行くことに。
渡された問診票に、「右の睾丸が不自然なほど大きいです」と書き提出。
待合が混んでおり長時間の待機が不安を煽る。
あわよくば「君の個性やで!」で何事もなく済んだりする可能性はないだろうか。
1時間半ほど待ち、ようやく診察へ。院長先生に対応していただけた。
触診で右のお玉を触ってもらう。
「あ~これは… 超音波で調べましょうか」
ということで隣の部屋に移動。ベッドに仰向けになり、下腹部から胸当たりにかけてジェルを塗られ超音波で検査。
再び診察室にて、超音波のスクショみたいなやつを見ながら院長先生が口を開く。
言われたことは
「ほぼ精巣腫瘍だと思われる。超音波で確認できる範囲で転移は見受けられない」
「CTや血液検査が必要になるため、設備及び専門医がいる病院を紹介する」
「いずれにせよ早めに精巣を摘出しないといけない」
「月曜日に入院準備して行ってください」
…片玉が確定した瞬間である。やはり「君の個性やで」ではなかった。
覚悟はしていたけど精神的に来るものがある。
ふらふらと駐車場に戻り、仕事中の嫁にLINEで状況を送信。
そのあと携帯で上司に電話する。
僕 「月曜日ですが、急遽手術、入院することになりまして…」
上司「ホンマか!引継ぎは何とでもなるから、とにかく療養を優先してください!」
…ありがたいお言葉。少し気分が楽になる。
上司「それで、症状は?」
僕 「オーン」
ありのままをお伝えすると、笑ってもらえました。
笑いごとにしちゃダメなのかもしれないですが、僕は救われる性分です。
精巣摘出の手術自体は1週間以内で退院できる内容のため、その旨も報告。
万一転移などが見つかれば、抗がん剤治療になるため長期入院になるらしい。
でも現時点では不明だったため、とりあえず1週間の有給をもらうことにしました。
夜に嫁と話したところ
「超音波やけど転移は見つかってないんよね?早めに行けてよかったやーん」
とあっけらかんとした様子。
でもわかる。僕に気を遣わせないようにしてるんだと思う。
明けの日曜日は、僕の人生史上一番不安な日曜日となりました。
何かにすがりたかったのか、風呂掃除とトイレ掃除を念入りにやってました。
夢オチを期待したがそんなことはなかったぜ。
◆ いろんな検査&精巣摘出
10月23日
月曜日がやってきた。市内で一番大きい総合病院へ。
嫁もたまたま偶然休みで、入院や手術の身元保証人のこともあるので付き添いしてもらうことに。
AM10:00 泌尿器科の診察
主治医の先生へ華麗に右玉を披露したあと、精巣腫瘍の話と摘出方法の説明を受ける。
ネットで先人の方々がおっしゃるように、鼠径部を切ると精巣が繋がっている根っこみたいな場所があるので、そこをカットして取り出す方式。高位精巣摘除術という。
手術は本日の夕方にやりたいとの事。
しかし、手術を行うには血液検査、心電図検査、肺機能検査、レントゲン、CTスキャンを経てもう一度ここに戻ってくる必要があると。
オープンワールドゲームの様相を呈してきた。
なお、手術までは一切の飲食を禁止された。回復禁止プレイっすか。
点滴というバフなのかデバフなのか良くわからない装備もセット。
血液検査
自分が今まで受けてきた血液検査史上一番多くの血を抜かれた。ちょっと痛い。
心電図検査
難なくクリア。
肺機能検査
筒を咥えてロングブレスダイエット。クリア条件となる波形を描けなければ、部屋から解放されることはない。3回リトライした。しんどい。
レントゲン
難なくクリア。
CTスキャン
造影剤を点滴で注入し、不穏な影を見やすくするとの事だが、注入された瞬間、頭から足の先まで日本酒をぶち込まれたような熱さを感じた。変な感じ。
12:00前
すべてのミッションをクリアしもう一度診察へ。
主治医の先生が開口一番、転移はありませんでしたよ!とのお言葉をいただく。
凄まじい安心感。すぐさまその根拠となるCTの画像の説明を受ける。
良い報告は「結論」→「過程や理由」の順番で話すと効果的だということか。
安心感を与える論の進め方を熟知している。さすが先生。
血液検査の内容説明を受ける。
腫瘍マーカーという、がん細胞が作り出す成分をカウントする数値の説明。
精巣がんで見られる成分の数値が出ており、手術後にこの数値がどうなるかで、体のどこかに残っているのか、そうではないのかを判断していくそう。
手術は予定通り、15:30スタート予定。痛みなどの問題から全身麻酔で。
病室が決まったので、看護師に付いて案内を受け、待機してくださいとの事。
いよいよ始まるのか…といった感じ。
13:00頃
看護師さんが待合室に現れ、嫁さんが入院案内を受ける。
丁度空いている個室があったため、そちらで過ごすようになるとの話。
テクテク歩いてエレベーターで2階へ行き、端っこの方の個室へ。
同意書やらなにやらを記入しつつ時間をつぶす。面会時間の制限があるらしく、一旦嫁さんとのお別れ。
手術前にまたお会いしましょう。お昼ご飯食べてらっしゃい。
手術を控える患者が着るユニフォーム的なものに着替える。
水色のガウンと、ふくらはぎを適度に締めてくれるソックス。そしてふんどし。
ふんどしを履くと少し勇気が湧いた。
お祭りを感じる。
15:30
看護師さんが着て、「片玉さん、行きましょう」と一言。
手術室まで歩いていくらしい。新鮮。
見送りに来た嫁に行ってきますと告げ、看護師さんと病棟の奥へ歩いていく。
手術室前の待合で看護師さん数人が合流。和気あいあいとする姿を見て癒される。
「関係ない話聞かせてごめんなさーい!頑張ってくださいね!」
と言われ、二の腕あたりを手でポンとされる。かわええやん。
そして紺色に身を包んだ人がお迎えに来る。手術室へ。
中に入ると紺色軍団が手術台を囲んで準備中。
「よろしくおねがいします」と頭を下げ、ガウンを外しつつ手術台へ寝転ぶ。
ふんどしを外し、とうとう靴下のみの姿へ。もう何も怖くねえ。
…と思ったら何かかぶせてくれた。危ない危ない。
麻酔科医の女医さんから挨拶と説明を受ける。すっごい美人ぽい。(目元超きれい)
酸素マスクをセット。若干息苦しい感じがするけどこんなものなのか?
なお、精巣を摘出するだけにもかかわらず、頭の中で医龍のサントラが流れている。
麻酔科医の方から「眠たくなる薬いれますね~」と言われた数秒後に、頭の中が痺れていく感覚が始まった。
粘ろうと思ったけど駄目だこりゃ。
◆ 摘出完了
「片玉さん、終わりましたよー お疲れさまでしたー」
「えっ」
気が付くと手術が終わっていて、気持ちいいうたた寝をしていた感覚でした。
時間を聞くと17時を回ったところ。
そのままガラガラとベッドのまま病室まで移動。
嫁の出迎え。あっという間だったーみたいな話をしていると面会時間の制限が来たので今日はもう帰るとのこと。いろいろありがとね。
傷口を襲う鈍痛、じんわりくる頭痛(麻酔の副作用?)尿道に管が刺さってる違和感など
いろんな不快感に襲われていながらも、「一つ山を越えた」という安堵感がはるかに上回っていました。
軽く上半身と手は動かせるので仕事の携帯をチェックし、引継ぎでトラブルが起こって
いないかメール確認。特になさそうだったので療養に集中しよう。
と思ったものの、ついさっきまで眠っていたこともあり眠気が全く起きず。
アマゾンプライムに入っていたので、シーズン1で視聴をやめていた「進撃の巨人」を見ることにしたのだが、本当に助かりました。時を一気に進めることに成功。
その代わり、僕はこの作品を見るたびにお玉が疼くという代償を払った。
「片玉を捧げよ!」
◆ 入院生活
10月24日
AM7:00
看護師さんと朝のご挨拶。かわいらしいお方。
えっ、いいんですか!?(狂喜)
…噂に聞いてたけど痛い。めっちゃ痛かった。かわいくなかったら危なかった。
ヒリヒリが続く。おしっこがまともにできるようになるか不安なほどに。
(2時間くらいしたら収まりました)
しばらくすると、担当医の先生が回診。
先生「今日から退院できますので、お家の人と相談して決まれば教えてくださいねー」
僕 「早ない?(わかりました!)」
傷の具合を診ての判断なんだろうけど、あまりにも早すぎるぜ。
とりあえず今日は歩くことを目標に頑張る。
有給も取ったしゆっくりさせてくれ!
俺がいなくても、仕事は回るんだ!!
すぐ戦線に復帰したがる漫画の主人公の真逆を行くスタイル。
そして待ちかねた朝食。
昨日の朝から何も食べてない。水も飲んでない。
やわらかめのご飯、キャベツと鶏肉を出汁で炊いたやつ、みそ汁、卵、海苔と牛乳。
とんでもなくおいしかった。ご飯の甘味を舌全体で受け止める。
過食気味で濃い味ばかり食べていた入院前の自分が、いかに体に負担をかけていたのかを思い知る。
この舌の感覚は大切にしたいと思いました。
一口に対していろんな感覚を使いながら食べていると、自然と量も少なくて済む。
入院してよかったと思えたポイントの一つ。
そのあと、散歩しようと思ってベッドから動こうとした瞬間強烈な立ち眩みを感じ、軽い失神状態になりながらベッドに倒れこむという事態に。
運よく部屋に来ていた看護師さんのおかげで元の位置まで戻ることができました。
手首で脈をとるのが困難なほど、血をめぐらせる力が弱まっているとの事。
自分の体を過信していたようでした。
無理をしないこと、丁寧に、謙虚に自分の体と向き合おうと思えるようになりました。
これが2つ目の良かったポイントでした。
それからは体力も少しづつ回復し、午後には散歩もできるようになりました。
退院も26日で決定。今週いっぱい自宅療養することに。
次回の検診は11月1日で、その時にもう一度検査を行い腫瘍マーカーのチェック。
結果次第で今後の治療方針が決まっていくとの事。
今回はとりあえずここまで。
保険のこと、お金のことは書いている時点でまだはっきりしていないので
検査結果と合わせて書いていこうかなと思います。
引き続きよろしくお願いします。